昆虫キッズによせて

昆虫キッズ、バンド名といいメンバーの名前(高橋翔、冷牟田敬、のもとなつよ、佐久間裕太)といいメンバーのビジュアルと言い本当に美しくてバランスが良い。

昆虫キッズに初めて出会った16歳の春、もうあれから6年もたった。千葉の片田舎に住んでいた私がバイト代でチケットを買い、開演時間に間に合わせるため着替えることもなく学校帰りにライブハウスに行くようになったのも、このバンドのためだった。知り合いが一人もいないライブハウスで昆虫キッズを観て、誰にもわかってもらえないと思いながらずっと音楽を聴いて毎日過ごしていた。暗くあれ、若くあれ、美しくあれ、書を捨てずに町に出ようと音楽から学んだ。

渋谷HOMEと新宿Motionをハシゴして一日二回ライブを観たり、栃木のライブハウスまで追っかけて観に行ったら出演バンドの半分がコピーバンドだったりした。メンバー全員人見知りで、MCのへたくそな変なバンドだった。それでもどんな音楽より腑に落ちて胸の中を占めていて圧倒的にかっこよくてたまらなかった。言葉にしたらそれだけになってしまうけど、昆虫キッズはわたしにとってただただひたすら特別だった。だいすきでだいすきで、しかたなかった。

冷牟田王子の甘いためいきをかためたような声で歌うシンデレラが聴けなくなるのはすごくさびしい。昆虫キッズを聴いて歩いたときにみた都心のネオンが、いまでも私の中の「東京」のすべてとして、更新されることなくとどまり続けている。


昆虫キッズ / WIDE (from DVD "BLUE GHOST remind")

彼らは私がいままでで一番時間とお金と愛情を費やしてきた、夢と悲しみの魔法がかかった愛すべきバンドだった。

昆虫キッズは壊れてしまった機械のような、電池の切れたおもちゃみたいな、輝かなくなったものの奥にあるほんの一筋の光とか美しさをうつしだそうとしているように見えた。幻で終わればよかった、とこのバンドに対していう人もたくさんいるけど私はこの美しいファンタジーを作ってくれたバンドのことをずっとずっと、昨日のことのように思い出したい。

なにより私は、昆虫キッズがすきな自分のことがすきになれて本当に幸せだった。