あっという間に夏が終わってしまった。熱くなりすぎる社用車のハンドルも、チカチカする視界の端で真っ黒に見えた濃い緑色の山も、エアコンで傷んだ喉にすべらせたハッカののど飴レモンの匂いの炭酸水ももうわたしのものではなく過去のものだ。今年の夏はずいぶん涼しかった気がする。アイスを食べる回数より、ビールを飲みすぎては気を失うように眠る日のほうが多かったからそう思い込んでるだけかもしれない。

仕事は繁忙期が終わって、日付が変わる直前に家を出てこれからなにをしようかと悩んでいるうちにどんどん時間が過ぎていってしまう。始発の電車の中、飲み疲れてあかない瞳と涙でにじんだまつげの端に流れ込む朝はそれはもうたいそうきれいでなんの意味もない光だった。当然のように使い捨てた一日のなかになにか大事なものを見つけなきゃと日付を超えてから必死に意味付けをした。映画を見るのも本を読むのも漫画やアニメたくさんの自撮りアイドルの笑顔美術品はやりの服、だいすきだったセックス、どん底でどぶさらいをしているって気づかせないための尊い浪費が一生懸命わたしのかわいいを作ってくれている。

誰もいたっていなくたって変わらない。一日一日 0.01ミリずつ気が狂う。コンドームみたいな厚さで、前からも後ろからも。金木犀の匂いがしはじめた今日の夜わたしはビールではなくコンビニで買った400円のワインを飲んだ。わたしたちを追い回すのは仕事でも公共機関の支払期限なんかでもなくて、言葉の通じない男たちが口にする記憶に残すほどでもない悪口だ。季節はたまにやってきて右肩を叩き、振り向くころには手遅れで根元の伸びた髪でしか時間の長さを感じられない。家に帰ってからが正気のはじまりだ、朝起きてから玄関の鍵をまわすまでずっとずっとずっと、ずっとそうして。


スカート / 静かな夜がいい【OFFICIAL MUSIC VIDEO】