年が明けてから配属先が変わった。慣れない早起きで紅茶色の空の下あくびをしながら最寄り駅まで12分、片道二時間の電車通勤で座りっぱなしの腰が痛くなり、二月気が付いたら24歳になっていた。かつて自分が思っていたより24歳は自由で、お金があって、時間はなかった。わたしは大人だから知らない街でひとりきりでもアイフォンの目覚ましひとつできちんと朝を迎えられた。そんなに好きじゃなくなってくれてよかっただなんて言われて、もうおしまいだね。引っ越し先は誰にも教えなかった。職場の男性が誕生日を祝いたいというのでもうひと月も過ぎているのにお酒を飲んだ。結婚したい、損してばかりの君を支えたい、男嫌いは家庭が原因だ、奥さんと別れる段取りはできている。わたしは損してばかりなんだろうか。目の前のこの男のことが心底憎いのはお父さんのせいなんだろうか。望んでもいないのに、あなたがわたしに着せたくて仕方ない普通を与えてあげるよと。倫理とか正義とか大人の事情でいっぱいの水風船を容赦なくぶつけておいて、どうしてこの最低の気分の夜にセックスをしようなんて言えるんだろうな。

どうせ春になれば濃くて甘くなった空気のせいでわたしと他の女の子の自撮りの見わけもつかなくなって、うやむやな夜がやってくる。輪郭がなくなったわたしは、知らない香りのシャンプーを買って一度も見せることのない服を着て他人みたいな季節を過ごして、君が泊りにきた日の朝のように、声もかけないままどこかに行くんだと思う。


ラブリーサマーちゃん「202 feat. 泉まくら」Music Video