ひたすらホットケーキを焼き続ける日々だった。冷蔵庫に余っていた消費期限切れの豆腐を使ってホットケーキを作るレシピを見つけて、何の気なしに作ってみた。豆腐入りホットケーキを焼くためだけに買ってきた卵、牛乳、ホットケーキミックスが全部ちょっとずつ余ってしまい、それを使い切るために新しい豆腐を買ってきた。卵・豆腐・牛乳・ホットケーキミックスの公約数にたどり着いて手元からすべてがなくなるまでおそらく焼き続けるのだと思った。なにかを始めると少しずつ帳尻が合わなくなって、気づくと膨大な時間を費やしてしまう。ただそういうことって往々にして人生の何らかの場面で起きたりしない?と高校からの友人に話したらある程度分かってもらえたので良かった。

 

京アニの事件のことで職場の人と話をした。わたしはどうしても自分が加害者の立場になることばかりを想像していて、なにかほんの些細な出来事が積み重なったり、引き金になって自分もああなるんだなと思いましたといった旨を話したら、いやいやそんなことないでしょ、加害者は人間じゃないよ、悪魔だよとああいうやつは生まれた時からああなんだよ。と話していたのでそうですかとだけ言って会話は終わった。自分のこどもがいじめられる可能性といじめる可能性、どっちが高いだろうか。

 

私がいる部署は会社がいま一番力を入れている事業部で、いわゆる出世コースなんだけど、「〇〇部署は顔で選んでるから」と多方面から言われすぎて異動願いを出そうか悩んでいる。それはおそらく美人に言うことだし、そもそも美人にだって言っちゃだめだ。外は信じられない暑さで、梅雨明けのニュースをあんなに待っていたはずなのにいざ訪れるとこれはこれでしんどい。我が家は西向きなので洗濯物がよく乾くわけでもないし、日焼けは絶対したくない。でも夏の日差しの下で目を細める男の子の姿や、寝汗の残った熱っぽいひたいはとびきりにかわいい。

ここ数日、喉風邪で39度近い熱が出ていた。夜12時頃、誰から聞いたのか振った人がお見舞いですといって家に訪ねてきた。お大事にとありがとうございますだけの会話。バッテリーの切れそうな携帯電話から聞こえた通話の終わる音。玄関先に置かれた冷凍食品。わたしの好きなんて、形の良い方の目玉焼きをあげるとか、人混みのなかでもすぐその姿を見つけられるとか、欲しがるほど大したものではないんだけどな。淹れた紅茶に浮いた埃がきらきらしている。飲みきれなくてシンクに流して、台所に一日を置いていく。

 


chelmico「Balloon」