暑い日、江ノ島水族館へ行った。いつ来ても同じことだけれど、海沿いは風が強い。ぼさぼさにならないために髪をまとめたせいか首筋がいつもと違う汗のかきかたをした。海獣の子供のモデルになった水槽を眺めたり、イルカのショーを見たり、ビールを飲んだりした。照明のせいで薄い藍色になった頬、瞳の色がいつもより深い茶色に見えた。江ノ電に一年ぶりくらいに乗った。踏切の音のBPMはいくつだろう。焼肉を食べる男の子の歯が、わたしの体にめり込むさまを想像する。蓄光の腕時計が日が落ちるとともに薄い緑色に発光していた。昼と夜で全く違う顔になる文字盤は、すりガラスでできているせいで何時なのかいつもよくわからない。


iri - Wonderland (Music Video Full Ver.)

 

仕事のことを考えると憂鬱になる。親子供配偶者が死んで間もない人たちの、目の前からすべてがなくなった日の話を聞いてお金をもらってる。いつか絶対にくる痛みと向き合っている人を憎めたら、今の仕事も楽になるかもね。弱い人だと切り捨てられたたくさんの人たちの魂のなかにある静かな火を吹き消す係は、いつも決まってしあわせを知ったばかりの人たちだ。呪い呪いって、2019年にもなって映画だドラマだツイッターでみんないまさら何言ってるんだろう。呪いから逃げればいい、自分を大切にすれば、相手を大切にすれば、目の前の幸せを愛せれば、その手のタラレバは10年前くらいから自分自身に言い聞かせ続けているのでもう結構です。べき、という言葉が最もふさわしくないのが愛だけど、仮に今日が愛すべき日々なら、神様がそうだとちゃんと決めて、臆病者のわたしが目覚めるときに天気予報や朝の占いみたいに教えてほしい。

 

部屋に貼ってあるハッピーアワーのポスターを眺めながら高校生の時から大好きなチャットモンチーを聴いて、しみじみ良い歌詞だなぁと思った。

愛され続けること 愛し続けること 本当はよくわかってない

曇ったレンズで何を見ていた?

愛され続けるよ 愛し続けるよ 本当はよくわかってる

壊れた破片は 光を浴びて そしてまたここを救っているよ

自分が食べるためのごはんを作るには腰が重くて、冷蔵庫に入っているお酒を右から順に飲んでいく。マンションのエントランスでよく見かける学生カップルとすれ違った。何を失ったか、時間をかけてあげられたかが恋愛なら勝つのは暇な大学生だな。今日は性格が悪い気分だ。