台風の音を聞きながら文章を書いている。実家にいたころ、家に帰らない(帰れない)口実ができるから台風の予報の日は必ず外出していたのを思い出した。異性の家をホテル代わりに、連日どこかに出ていく私のことを母親はどう思っていたんだろうか。天気の悪い日に会う男の子たちに、雨の音と風の音の割合、何対何が一番気持ちいいと思う?と聞いてもほとんどの人が「なにそれ」と言うだけでいつもつまらないなと思っていた。雨が降るとベランダに逃げられなくなるから実家に住んでいた時は雨の日がきらいだったけど、一人暮らしをするようになってから窓越しに見る曇り空と強風にあおられる植物、窓ガラスが水滴でいっぱいになって埃が流されていく様子を見るのが好きになった。

 

久しぶりに暑かった土曜日、東京藝大の学祭に行ってTシャツを買って上野公園でビールを飲んだ。学生の売るものはどれもこれも値段が安すぎて不安になった。大人になって自分でお金を稼ぐようになってから、ものづくりに携わっている人たちの「時間をかけた」という事実に対してきちんとお金を払いたくなるようになった。その後香水を選んでほしいという話になり、新宿へ移動し伊勢丹のメンズ館でいろいろな匂いを嗅いだ。本当は上野でうなぎを食べる予定だったのにビールでおなか一杯になってしまっていて、紆余曲折ありなぜか高野フルーツパーラーでメロンのパフェを食べることに。高野の店員さんたちのスカート丈が短すぎやしないかという話をしていた。そのあとルミネに移動してコーデュロイ生地の赤茶のアウターとベージュのチェックのスカートを買った。季節を待ち伏せる形で服を買うのはあまり得意じゃないんだけど、秋冬の入り口が楽しみになるような色の服を選べたのでよかった。

 

告白してくれた男の人から「君に馬鹿だと思われたくなくて、すぐに謝ったり発言を撤回したりしてしまう」と言われた。間違いなく、私が五年付き合っていた人に対して当初抱いていた感情と一緒だった。この言葉、言われるととても寂しくなることを薄々感づいていたから私は恋人には言えなかった。


キリンジ - エイリアンズ