12月の20日ごろだったか、インフルエンザになった。1年で40度近い熱が何度も出て、夏には救急車に一回乗った。生まれたてなのか?と思うほど免疫力がない。たぶん慢性的な睡眠不足のせいなんだけど、こればっかりは持病なのでなんとも改善が難しい。前に人から「なんで寝ないの?」と言われて傷ついたのを覚えている。病気の人になんで治さないの?というのと一緒だよと言ったらだって君の病気は仕事辞めれば治るんでしょと言われた。そういうことじゃない、というのを抱えたままの会話は苦しいし、わたしはそうじゃないをいちいち説明するほど、目の前の人に好意も悪意もなかった。わたしにとっての愛情は時間を割くこと、言葉を選ぶこと、大切だと思ったことを忘れないことだと去年一年でなんとなくわかった。

 

年末は高校時代からの友人が泊まりにきたので、みんなで回転寿司を食べてクリスマスケーキ(もう何日も過ぎていた)を買って家でマリオカートをした。急に誰かが「銭湯いきたいな」と言い出しググってから10分後には家を出て店じまい一時間前の銭湯にすべりこんだ。3人いれば一人くらいは外出るのしぶるもんだよ、といったら「たしかにね~」とみんなニヤニヤした。

 

年始に好きな人が遊びにくるので実家でついたお餅を持って帰ってきた。にこにことお雑煮を食べている様子を見て、お正月だなぁと実感した。成人男性が餅を食べる機会はおそらく年に数える程度しかない。見たことのない顔や仕草と、見慣れた仕草がくるくると入れ替わる様子にとても幸せを感じる。テラスハウス見てあぁだこうだ言ったり、なぜか朝6時までストレンジャーシングス観たりしてたけど、起きたら午後3時だったから、これも寝正月になるのかな。春になったらどんな服を着ているんだろうとか最近食べたおいしいものはなんだったかとか、そういう手触りのないものばかりどんどん知りたくてほしくなる。もし大きな地震が来たら、わたしが遠くに引っ越したら、ある日突然返事が来なくなったら、そういうたくさんの諦める理由を全部けとばせるくらいには、この人がかわいい。

 

休みの日はたいてい料理をしている。食べ物を作りだめするのは冬だけ、越冬のためのリスの気分になりながらカレーやミートソースやスープを作る。人に趣味を聞かれたら料理と答えるのだが、へ~今度作ってよ!と言われるのがいやなので最近は「趣味ですがとてもまずいものが毎回出来上がります」と言っている。非常に効果的です。

 

以前職場の男性に1か月に7回食事に誘われ、断り続けるのが苦痛で上司に相談したときに「君が勘違いさせるようなことしたんじゃないの?」と言われた。まぁそこは50,000歩譲っても許せないとして、その時に上司に「彼氏がほかの男と食事すると怒るんで」って言えばもう誘われないでしょ、と言われたことがずっとひっかかっている。

してその時わたしは「いや、でもわたしの彼氏はそんなこと言ってないので、そう言っていいかどうか確認します」と答えたらいやいや、嘘も方便だし、彼女がほかの男と食事して嫌なのなんて確認するまでもないでしょと返された。わたしは「本人の本意かどうかわからない言葉を代弁するわけにいかないんですが……」と返した。よくわからないという顔をされた。わたしは当時付き合っていた恋人にその旨を伝えたら「別にほかの人と食事しても怒らないけど、誘われて困ってるときにその返答が有効なら、そう言ってたことにしてくれて全然かまわないよ」と返事がきて、わたしは良い人と付き合っているな……と実感した。ちなみに上司は別の人に、彼女は本当はモテて困ってるアピールをしたいだけなんだろうと話していたということを知った。そしてわたしが何度も断ってきた言葉(会社の人に誤解されたくない、仕事終わり家でやりたいことがある)よりも、「彼氏が怒る」の一言のほうがはるかに効果的であることを知ってなんだかすごくむなしくなった。もうそろそろそういうのに対して反撃するスキル身に着けたいな。

 


前野健太と大森靖子「友達じゃがまんできない」2014年12月14日