7日朝起きてひとしきり泣いてから化粧をした。食欲が戻らず、けっきょく何も食べずに予約していた脱毛サロンへ。30万もかけて全身ツルツルにしてなんの意味があるんだろう。恋愛が終わった後に自分磨きにいそしめる人が本当にうらやましい。わたしは自分のために努力するのが苦手な人間だ。TSUTAYAでだらだらDVDを吟味した後はアルバイトへ。気合を入れて出勤したのにめちゃめちゃ暇だったので早上がりになった。いつもはタイムカードを切るのが23時を回るので電車の中では疲れて寝ていることが多いのだけど、今日は22時前に電車に乗れた。眠くならなくて東京から千葉の片田舎へ動き続ける景色を目で追っていた。東京は本当に見晴らしのいい地獄だ。全ての人に黒歴史と後悔を与える美しい街のなかで、なんとかうまくやらなければと立ち回っている。

 

8日祖母の訃報でたたき起こされた午前八時。父にそっくりな顔をした祖母の遺体に触れて、人の体は本当に入れ物でしかないな、と強く感じた。死んだ人に触れるのは10年ぶりくらいだった、驚くほど軽い肉の塊は徐々に弾力がなくなっていって気づいたらもう葬儀業者が病院に着いていた。祖父が買い貯めていたボンタン飴とキャラメルと都こんぶを一口も口にすることなく祖母はいなくなっていった。遺体のある部屋でお金の話をするのに耐えられないのは私の心が弱いからだろうか。春のようなあたたかい日差しのなかで、ドライアイスを重ねられた祖母のくちびるだけが色を失っていく。


麓健一「葬列」

この日は飼っていたヤモリも亡くなり、この二週間のあいだで恋人と祖母とヤモリを失った。恋も勉強も仕事もうまくいきたいから進研ゼミでもはじめようかな。死ぬのは二度と会えないってだけだよ、それ以上でも以下でもない、と何かの漫画で聞いたけどこんな形でその意味を思い知らされるとはおもわなかった。