30日朝一、なぜか起床時間に上司からモーニングコール。想定外の事態が発生し電話をとってから10分でスーツに着替えて家を出て納品に同行する。車のなかで眉毛を書きながら半分寝ていた。11時間の労働を終え、帰宅してから部屋の掃除をしていると別れた人の写真がぽつぽつと出てくる。写真に写っているかつての恋人の不愛想な顔と、それを撮っていたときどんなに幸せだったかを思い出すと、自分の内側から零れ落ちるようにかなしみが湧いてくる。今泣いているのはこの瞬間の悲しみなのか、かつて悲しかったことを思い出して泣いているのかわからなくなる。思い出に泣かされる不毛さなんてずっと前からわかっていて、腐ることもただれることもできない生活のなかでいったい何に向き合っていけばいいのかわからない。明日の仕事のことと毎日食べるごはんのことだけ考えていられれば、こんな痛みの中で踊り続けることもなかったのかもしれない。


[AUDIO] 宇多田ヒカル Utada Hikaru - 桜流し (Sakura Nagashi) (With Lyrics)

 

1日五十嵐大介のディザインズをいまさら購入。

ディザインズ(1) (アフタヌーンKC)

ディザインズ(1) (アフタヌーンKC)

 

 相変わらず美しい絵だなと心奪われつつ読む。職場から自宅までの間にローソンしかないので本屋やTSUTAYAに行く機会がなくてとてもさびしい。都会から外れた場所に一人暮らししていると簡単に文化的なものから遠ざかることができる。生まれ育った場所がこういうところだったらそりゃマイルドヤンキーにもなるよな、と思いながらコンビニとラーメン屋のまえで座りながら煙草を吸うギャルたちとすれ違う。

 

2日仕事終わりに新宿で同期とごはんを食べた。貧乏性なのと、外食を続けると肌が荒れる体質のせいで久しく外でごはんを食べていなかった。エビのアヒージョ、牛すね肉のワイン煮込み、鴨のローストを食べながらワインをしこたま飲んで仕事の話だけをして帰宅した。新宿でやっていたライブイベントに行こうか迷ったものの、自分の聴きたい音楽だけを楽しみたい気分だったので帰宅して一十三十一を聴きながらシャワーを浴びた。


一十三十一 『Stardust Tonight』

 

3日立ち仕事の4連勤というのは思ったよりもはるかにつらくて、昨晩のアルコールのせいもあってか珍しく11時まで眠ってしまった。ふられてから二か月と少し、初めて夢の中に別れた恋人が出てきて、目が覚めた後も魔法にかかったようなけだるい幸せのなかから抜け出せずにいた。起床してフルーツグラノーラ(ヨーグルトで)を食べてニュースを観ていたら夢の続きを望むかのようにソファに座ったまま寝ていた。同期からボディビルの大会を観に行こうと誘いが来ていたけどあまりに元気がなかったので丁重にお断りした。夜はたまごの入ったうどんを作って食べた。


Suchmos ”GIRL feat. 呂布”(Official Music Video)

25日会社の研修。焼酎とビールを延々と飲みながら下ネタを話していた記憶がおぼろげにある。両サイドに座った女の子たちがしなだれかかってきて、その重さがすごく心地よかった。この日は給料日、30万弱支給されたけど使い道が思い浮かばなくてamazon午後の紅茶無糖を2箱買って終わった。

28日女友達と一緒に恵比寿で遊びまわる。立ち寄った本屋で安野モヨコの新しい漫画を購入。わたしはこういう、幸せな人物が誰もいない漫画が好きだ。帯に書かれた「他の女のとこに行かれるくらいならお金を払った方がまし」。女でいる地獄も男でいる地獄もみな等しい世界に生きていられることは喜びでもあるし、同じくらい苦しいことでもあると思う。

鼻下長紳士回顧録 上 (フィールコミックス)

鼻下長紳士回顧録 上 (フィールコミックス)

 

 

はやく続きがでないかな~。


aiko-『夢見る隙間』music video short version

29日昔は目に見えるものがほしくてたまらなかった。ほしいCDも好きな男の子もかわいいピアスも手に入れないと仕方なかった。年を取るにつれて優しさだの愛だの安定だのぼんやりしたものを求めるあまり、つかんでもつかんでもこれじゃないと泣きながらゴミの山をあさり続ける日々を過ごしている。昼間の穏やかさと夜のむせかえるような濃いさびしさの隙間を埋めるように、退社後スーパーの総菜売り場でれんこんの天ぷらとアナゴの天ぷらの前をうろうろしている。aikoの新しいアルバムと給料日だけを楽しみに過ごすだろう。

 

15日祖父の訃報により入社して二週間弱で忌引きの申請方法を覚えた。三月に祖母を亡くし、それからひと月と少しで父の両親は二人ともいなくなってしまった。家族という形についていつも考える。テレビでやっているドラマのようにうまくはいかず、狭い3LDKのなかで私たちはいくらでもこじれてしまう。今まで家族としてやってきたことへの自信なんてなにもなくて、22年やっても他人は他人であることを確認し続けるだけの日々が続いている。

18日四日ぶりの休み、新宿のルミネを一周してもほしい服が全然見つからなかった。神奈川県に引っ越してからというものの、買い物は100円ローソンしか行かないので久しぶりにでた町中は情報量が多くて歩きづらく、とても楽しかった。普段なら絶対食べないものを食べたり、行かない場所へ行ったり着ない服を着るのは楽しい。新しく手に取るものなかに不安や期待や執着を見つけるたびに自分のバックグラウンドを見つめてしまう。過去にとらわれて生きられるくらいの美しい過去を山のように持っているから、新しいものなんて何も手にしなくても正直やっていける。それでも前に進まないと気が済まないから、働いたり新しい料理を作ったりせずにはいられないんだと思う。

19,20日葬儀と告別式。滞りなく終了。人によっては不謹慎だととられるような内容で笑いが起きたりもした。久しぶりに会った父と母は思ったよりも元気そうだった。ひと月ぶりに帰ってきた実家からビートルズのボックスセットを持ってきた。ビートルズで一番好きなアルバムは「ヘルプ」だというとたいていの場合同意は得られないし一番好きなのはジョージの書いたこの曲。


The Beatles ~ I Need You ( Lyrics )

21日朝いちで美容室に。毎回ギャル男みたいな人にヘアカラーをされるのがつらいのでそろそろ引っ越し先の近くで良い美容室を見つけたい。

この一か月ほどでバイトをやめ、大学を卒業し研修旅行に行き配属先で働き始めた。アルバイトでは最後の出勤日に歴代3番目の売り上げを出しとてもすがすがしかった。いろいろなものを失ったあとだったのでこの数字に支えられて3日くらい乗り切れた。卒業式はさして仲良くもない同じ学部の子と形式的な記念撮影をして足早に帰った。仕事の研修は福岡で一週間ほど。毎日3時間程度の睡眠でひたすら座学とグループワークをさせられる日々は地獄そのものだった。へらへらしながら過ごしていたから周りの子よりは少しだけ元気でいられたし、そこを見込まれて人事から良い評価をもらえた。

 

引っ越しが完了してから一か月弱、働き出してから約半月。ようやく生活のペースが作れてきた。朝は8時に起き化粧をして朝ご飯を食べてスーツに着替えて8時45分に家を出て徒歩10分の職場へ着く。リズムにさえのれればなんといったことはなくて、帰り道のスーパーで高いなぁなんて思いながら生野菜を買って、料理と洗濯とお風呂で一日は終わる。好きだった男の子に、しっかりしてるねと言われたい一心でやっていた家事はいまや働く自分を支える最低限のものだ。一人暮らしはさびしさよりもはるかに安心のほうが多くて、自分による自分のための日々がこんなに愛せるものだと思わなくて驚いている。

 

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わたしが22年間過ごしてきたあの部屋のことを、遠い昔のように思い出しながら洗濯物を畳んでいる。家事と仕事だけに追われて、おおよそ文化的とは言えない生活をしていることはわかっている。それでも前と同じで、そんなつもりじゃなかったのに、をなくすためにこんなに必死になっている。誰かとわかりあえる期待はいつまでたっても捨てきれず、キスは言葉足らずを補うための存在だと信じて疑わなかった。長いこと夢を見ていたんだなと気づいた。元カレに似た顔の男の子とデートをしては申し訳なさだけを抱いて一人の部屋に戻ってくる日々はもうやめた。新しい街の新しい温度に似合うように、はやく元気にならなくちゃ。孤独を孤独にするかそれ以上のなにかにするかを決めるのはわたしだから。

19日早起きをして引っ越し前に最後の買い物を済ませる。母と二人でホームセンターへ行った。小柄な母が嬉しそうに腕を組みながら私と歩く。春に降る雨の色って濃いグレーだよね、と話したらわかる、と言ってくれた。初めてクイックルワイパーを購入して家に帰ってから振り回して遊んでいたら父に怒られた。

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夜は東京女子流のメンバーが主演の「5つ数えれば君の夢」とトリプルファイヤーが音楽をやっている「サッドティー」を観た。やっぱり群像劇は見ていて面白い。まえに前田敦子が映画のなかでもとりわけ群像劇が好きって話してたのをテレビブロスのインタビューで見てすごくうれしかった記憶がある(私は前田敦子が好き)

東京女子流ちゃんの初主演、アイドル主演になぜか多いホラーものじゃなくてよかった~。「5つ数えれば君の夢」も先日みた「桐島、部活やめるってよ」も思春期特有の視野のせまさとか勘違いがたくさんあって観ていてむずがゆくなる。中高生のときって、必要以上に他人の感情に伝染されやすくて本当に嫌だった。他人と自分の境界線がゆるくなる感じが気持ち悪くて、吹奏楽部を辞めたのをよく覚えている。学校のなかではかわいくて人気者のリーダー格な女の子が、顔がよくて軽薄な他校の男子にあっさり騙されて冷たい言葉であしらわれるあたりに苦しくなりました。正直セリフまわしとか、個々の演技力とかつっこみたいポイントはいっぱいあるんですが、エンドロールの映像が最高なのでそれだけでも85分観た甲斐があると思います。美しいかどうかを自分の目で自分で決めることができた子だけが、学校のなかから抜け出すことができるんだと思う。


映画『 5つ数えれば君の夢 』予告編

「サッドティー」は面白かったしムカつくシーンだらけだったなぁ~。なかでも早稲田と園子の別れ話のシーンはつらかった。正直に話すことだけが美徳ではないけど、彼がそれを正しさだと信じ込んでる以上はそれ以上の答えって作れないんだよなぁとしみじみ思った。あと夕子と柏木の別れ話のシーンは柏木の無神経さに虚しさすら覚えた。作中で何回も繰り返される「ちゃんと好き」という言葉の意味を考えている。ちゃんと、とか正しい、とか良い悪い、誰が決めるのかわからないけどね。会いたいと思えれば、ほかに恋人がいても奪い取ろうと思えれば、二番目でも良いと思えれば、そういうのが「ちゃんと」好きなのか。倫理やモラルで測れないから恋愛はなによりも苦しい。


今泉力哉監督作品『サッドティー』予告編

毎日映画を二本観る機械になっている私を母が心配している。

18日このタイミングでなぜか年収二千万円の開業医をやっている友人に告白される。君をふった男より優しいよ、収入がいいよ、君の意見を尊重するよ、未来は明るいよと説得するような口ぶりで、その話し方は別れたくないと泣いたわたしをたしなめたときのかつての男の子たちにそっくりだった。理由や説得じゃなくて、会話がしたかった。もしかしたら私とこの人が手を取り合って笑いあう未来があったのかもしれない。ただ、いまは乾かない傷のことばかり考えてしまって、誰の手を取ることもできず先に進めないままこの話は静かに終わった。眠れない夜、起きあがれない朝、いくら寝ても足りない昼、体中にすきな気持ちが残っていても報われないという事実が私を殺しに布団のなかまでやってくる。恋人にふられてから21日目、初めて涙を流さずに一日を終えることができた。


宇多田ヒカル - Goodbye Happiness

東京、町中のすべてが恋人のために作られているように見えて大好きだった。明後日からは知らない土地の知らない部屋で、だいすきな漫画と服に囲まれて誰に知られることもなく村人Aになって生きていく。すべてにすべての事情があって、それを許さなきゃ生きていけなかった家からようやく離れて、一人のための暮らしをはじめる。

14日ようやく引っ越し先が判明。神奈川県の成れの果てのような地に一人暮らしをすることとなった。近所にはコンビニ、スーパー、ドラッグストアがあり念願だったTSUTAYAも徒歩圏内にあるそうで私は非常にうれしい。しかも今年一月にできたばかりの新築で追い炊き機能がついている。落ち込んでいた自分をはげますために7千円くらいするふろ用の椅子を買った。

 出勤前に本屋によって「私を連れて逃げて、お願い。」の最終巻を購入。わたしはほんっっとーにこの漫画が好きで、迷うことなく2016年の最高作品に挙げたい。みんな読んでください…お願いします…まわりに読んでる人いなくて悲しいです…

君は生きてるかわいさでいっぱいだ

そう言って別れた央治を思い出して日芽が泣きながら放つ

夢じゃないから苦しいんだわ

すばらしかったから苦しいんだわ

という台詞に涙が止まらない。恋愛の不格好で悲しいエゴの部分だけを集めたような物語だったけど、間違いなくこの二人にはお互いしかいなかったし、かけがえのない不格好ならそれはその人にとっての宝物だ。最後がハッピーエンドで本当によかった。かわいい二人には幸せになってもらいたい。

 

15日注文していたCASIOの時計が届いた。

[カシオ]CASIO MODEL NO.lq139e-9a LADIES[並行輸入品]
 

 どう贔屓目にみてもかわいい。時計はvida+とチープCASIOが好きで各3本ずつくらいを使い分けている。ゴールドだけど文字盤自体が小さいので派手すぎなくてよい。

夜は半分くらい寝ながら「夢売るふたり」を観た。冒頭の10数分でいきなりの火災シーン。衝撃だった。時間が経つほどに辛くなってきて、主人公は男の人生に便乗しないと幸せを得られないのだろうか、と悲しい気持ちになった。結婚という言葉に夢なんて全く持っていないが、劇中の二人がこんなさもしい思いをしてでも一緒にいたいと思えるのならそれはそれで夢のある話なのかもしれない。間違いなく誰も幸せにならない嘘だけど、それでも騙されてみようと思える瞬間は私の記憶にもいくつかあった。


夢売るふたり

 

16日「はやくぼけたばあちゃんになってすべての苦しみもすきな人の名前も忘れたい」と真夜中にツイッターにつぶやいていた。そこそこ真理だし本音だと思う。この日は「メゾン・ド・ヒミコ」を観た。8~9年前くらいに深夜に地上波でやっていたのを祖母の家に泊まった時に観た記憶がある。話の内容を全く覚えていなかったので再度レンタルして観てみた。


メゾン・ド・ヒミコ

とにかくオダギリジョーの若く美しい姿がこんな最高な形で映像に残っていることに奇跡を感じずにはいられない。「う、う、う、美しい~~」とマジで声にでた。オダギリジョー演じる春彦のアンバランスさが愛さずにはいられないし、柴咲コウ演じる沙織の、大人びた顔立ちに似合わず感情がすぐ顔に出ちゃうあたりの子供っぽさに惹かれる。未来のない人たちが一箇所に集まって暮らしている姿にものすごい空虚な匂いを感じたけど、季節を大切にして美しいものに感動しながら生きる人々の姿はそれだけで勇気をもらえる。終始もの悲しさに溢れている上に、何も解決しないまま漫然と時間が流れていく様子に苛立つ人もいるかもしれないけど、ラストシーンのオダギリジョー柴咲コウの笑顔を見て、なにかが解決しなくてもハッピーエンドは作れるよ、やっぱり、と思った。

映画を見終えてからは表参道へ、別れた恋人に選んでもらった高い眼鏡が出来上がったらしいので受け取りにいった。クレイトンフランクリンのメガネ、めっちゃ小顔に見えます。

 

17日朝から購入した家具の搬入にamazonの荷物の受け取り、映画を二本観るなど珍しく活動的だった。リサイクルショップで見つけたソファは座り心地もよいし、ボディの木の色味が深い茶色で落ち着いた雰囲気で気に入っている。20日から新しい街で生活を始めるので少しずつ心の準備を始めている。映画は柳楽優弥が観たかったので「誰も知らない」と「星になった少年」を。感想は後日。夜はアルバイト。チェキ20枚くらい撮ったのでさすがに疲れた。