元カレが福岡から東京に越してきてから、何度か会ってご飯を食べている。手を柔らかく握られて、変えたメイクや目の色を褒められるたび、この人と結婚する世界線もどこかにあるんだなと思う。

五年付き合ってた恋人に一生分の結婚しようをあげてしまったからもう私の手元から失われたものだけど、昔話をするみたいにそのころの、19歳から24歳までの気持ちを思い出した。いまでもずっと、誰かと死ぬまで過ごすならその人しかいなかった。神様を信仰するみたいに、敬虔に思い続けている。チルでもエモでも覆せない勤勉な愛情の裏側をのぞこうと悪い人がたくさん近づいてくる。悪趣味なのはカメラロールの中身だけにしようや。みんな天使にも神様にもなりたくないはずなのに天使と神様が大好きで、一人の神様を奪い合うはめになる。すべて承知の娼婦の役はもう降りて次の芝居をはじめたい。もっと違う設定で、もっと違う価値観でやれるからやらせてほしい。散らかった部屋だけはいやだけど心を散らかされるのはだいすきで、丁寧に片づけて次の誕生日のための準備をする。


大森靖子「KEKKON」 LIVE 真っ赤に染まったクリスマス 2019.12.24