知り合いから突然電話がかかってきて、10年ぶりくらいに会話をした。「仕事なにやってるの?ウケるね、やってて楽しい?なんでその仕事してるの?人の不幸で金もらってる人の話聞いてみたいからなんか適当に仕事のことしゃべってよ、結婚しないの?彼氏いないの?男遊びしてんでしょどうせ、おまえはそういうやつだよね、反社会的な人間だし、おまえの友達もおまえのこと怖くていやなやつって言ってたよ、つるむのやめとけって言っておくわ」とかれこれ小一時間聞かされ続けて、あぁこの人のこういうところ、本当に嫌いだったなと昔のことを思い出した。大人だから、わざと嫌な気持ちにさせようとして言っているくらいはわかる。こういうのまで含めてこの人にやさしくして、許さなきゃいけない理由なんてあるのかな。「わたし、あなたになにか嫌なことしましたっけ?」と聞いたけれどこれといった返事はなかった。

同じくらい相手を嫌な気分にさせる言葉も知っていたけれど口には出さなかった。相手もどうせ酒を飲んでいるから明日になれば忘れてしまうだろうし、そんなもののために勇気を出して話すほどの体力も義理も真摯さも、仕事終わりの午前2時には持ち合わせてなかった。男の人とLINEや通話で口論になった結果、暴力をふるわれたことや嫌がらせやストーカーまがいの行為をされたことがある。臆病で疲れていたわたしは言い返すことよりも会話を早く切り上げたくて、へらへらと適当に相槌を打ってなんなら少し笑いまでとってしまった。情けなくて、恥ずかしくて、悲しくて、屈辱的だった。はっきり言って、彼の言葉なんかより自分のとった態度のほうに傷つけられている。わたしはばかで図々しいけれど、情けないことはしたくなかった。泣くより前に睡眠薬が効いたから次の日の朝も目が腫れずに済んだけれど、すがすがしいくらいの自己嫌悪と曇り空のおかげで近年まれにみる最悪の起床をした。

 

友人とオムライスを食べた後ダルデンヌ兄弟の新作を観に行って、ミッフィー展に行って、ビールが死ぬほど安い居酒屋で恋愛の話をした。たのしかった。好きな人にLILNEを送った。好きな人に会いたい。


その手に触れるまで - 映画予告編 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督最新作