数か月ぶりに会った女友達がむき出しの発泡酒を12本持ってニコニコとあらわれた。パクチー餃子を一緒に包んで焼く。もはや趣味と化している餃子作りだが、合いびき肉で作るパクチー餃子と豚ひき肉と山ほどの生姜チューブとしめじで作る餃子を超えるものは今のところ作れていない。男の子にピアスを開けてもらうかもと話したら「めっちゃいい!!矢沢あいの世界観じゃん」と言われてやはりこの女とは魂を共にしている……と実感した。彼女からプレゼントでもらったティントつけたら顔色が明るくなって嬉しかった。

 

近くに住んでいる男性と週1くらいで会ってお酒を飲んだり飲まなかったり、政治、アイドル、映画、テラハ、ファッション、デパコスの話をする。彼はフリーランスなので平日休みのわたしと予定が合うのだ。この友人の話をすると、どうせ寝てるんでしょといったニュアンスで切り返されることが多いのだけどそういう起承転結しか思い描けない人ってほんとにつまんないやつばっかだし、相手のセクシャリティのこととか想像してないよね。金曜は彼と東京都現代美術館オラファー・エリアソンの展示を見に行き、時間がちょうどよかったので「ストーリーオブマイライフ/わたしの若草物語」を観た。映画はいまいちだったけれどわたしは三人兄姉の末っ子に生まれたせいか、兄妹ものにすぐ感情移入するので長女の結婚シーンで一度泣いた。

 

最近ナンプラーを買ったのでタイ料理みたいな味のものを量産している。ナンプラーはくさいけどうまい。常に最先端を行く人間なのですでに体調は絶不調、安定の夏バテしていて、一応ごはんは作るがあまり食べられない。ヨーグルトとビールで乗り切ろうと思う。リッキーくんからインスタのDMでおすすめの漫画を教えてもらった。同年代の男の子がどんなものを読んでいるのかあまり知らないのですごくありがたかった。わたしからも何冊か紹介する。漫画は良い……。

花と頬 (楽園コミックス)

花と頬 (楽園コミックス)

  • 作者:イトイ圭
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: コミック
 

一年に一度、本を20冊くらい買って一年くらいかけてそれらを読み、売るなり人にあげるなりして本棚を空にして一年後にまた20冊くらい買う。別に誰に教えられたでもないこの謎の読書習慣が大学の時くらいから続いている。ネイルの色を深めのエメラルドグリーンにしたら中公新書のカバーと同じ色になった。芸能人の不倫が話題なので思い出したように吉本ばななの「不倫と南米」を買って読む。

不倫と南米―世界の旅〈3〉 (幻冬舎文庫)

不倫と南米―世界の旅〈3〉 (幻冬舎文庫)

 

 

他人に期待しない、というと薄情な人間だと思われるけれど、わたしにとって期待しないというのは「誰かがわたしのために何かしてくれること」を期待しないという意味で、人間という生き物そのものに期待していないという話ではない。自分の伏線は自分で回収しないととっちらかってしまうし、その方が何かと都合が良い。自分のことが分からない、それでは他人といるのと同じになってしまう。自分のなかによくわからない他人が住んでいるのは不気味だ。感情を水でさらって、死にたさやなつかしさやエモさの薄皮を最後の一枚まではがして裸の言葉にしておかないと、わたしはわたしの説明がつかなくなってしまう。だから映画を観て本を読んで漫画を読んで仕事をして音楽を聴いて誰かと恋愛をして、わたしが私のなかの他人と会話をするための言葉を選んで、わかり合えるように努力している。わたしは自分で自分の顔を見ることができない。一個体としての「他人」になれないけれど、内側にいる最も身近な他人と会話ができる。わかりあうなら、話し合うなら、なにかを期待するなら、自分だった。

だから惰性とその場しのぎの言葉遣いを見逃せないし、自分のこともろくに考えずに「他人とわかりあいたい」みたいな妄言を生きづらさを言い訳に被害者面してうだうだとくっちゃべるやつが大嫌いだ。そういう男に対して劣情を催すことはあるけれど(本当に悪い癖だと思う)、恋愛をする機会はないだろう。別に自分が優れた強い人間だとも思わないし、弱い人間を大切にしたいと思うけれど、わたしは弱さに無自覚な人を認められない。そういう人間だということに26年生きて最近少しずつ気づいてきた。でもそれにも絶対に理由があるから、それを考えなくちゃと思う。そしてそんな頭のおかしいことをしても気が狂わない程度には自分は図太い人間なんだなと思った。


Faye Webster - Kingston